2026年、中国発の越境ECプラットフォームであるTemuとSHEINが、新たなフェーズに突入しています。それは「Local to Local」戦略。これまで中国から直接消費者に届けるビジネスモデルが主流でしたが、今、両プラットフォームは現地の事業者をマーケットプレイスに招致し、国内倉庫からの迅速配送や大型商品対応を可能にし始めています。この変化は、日本企業にどのようなチャンスをもたらすのでしょうか。

TemuとSHEINの「Local to Local」戦略とは

Temu/SHEIN Local to Local戦略コンセプト

まず、TemuとSHEINがなぜLocal to Local戦略に舵を切ったのか、その背景から見ていきましょう。

Temuは2022年に米国でサービスを開始して以来、「驚くほど安い中国製品」をウリに急成長してきました。しかし2025年以降、いくつかの課題に直面します。一つは各国の関税政策の変更。特に米国のディミニマスルール(少額輸入免税制度)の変更は、Temuのビジネスモデルに大きな影響を与えました。もう一つは消費者の「品質への不満」。低価格を追求するあまり、品質面で課題を抱える商品も少なくありませんでした。

こうした課題への回答として打ち出されたのがLocal to Local戦略です。Temuは各国に現地の事業者を誘致し、国内倉庫から発送する仕組みを整え始めました。これにより、従来の中国直送モデルでは難しかった大型商品や生鮮品の取り扱いが可能になり、配送リードタイムの大幅な短縮も実現できます。さらに、現地の消費者の嗜好に合った商品を現地の事業者から仕入れることで、品揃えのローカライズも進めています。

SHEINも同様の戦略を展開しています。SHEINは2025年に日本市場に本格参入し、同時に地元の事業者をSHEINのマーケットプレイスに誘致する取り組みを開始しました。注目すべきは、SHEINがJD Logisticsと提携し、物流インフラを強化している点です。これにより、日本国内の事業者がSHEINのプラットフォームで販売する際の物流ハードルが大幅に下がっています。

なぜ今、Local to Localなのか

Local to Local戦略が加速する背景には、いくつかの要因があります。

第一に、関税リスクへの対応です。2025年の米国ディミニマスルールの変更に象徴されるように、各国政府は中国からの小口輸入に対する規制を強化しつつあります。中国から直接発送するモデルは、こうした規制変更の影響を直接受けます。一方、現地の事業者から現地倉庫に在庫を置いて発送するLocal to Localモデルは、関税リスクを大幅に軽減できます。

第二に、消費者の品質意識の高まりです。2026年、消費者は「安さ」だけでなく「品質」や「サステナビリティ」にも目を向けるようになっています。韓国ソウル市の調査(2024年8月)では、TemuやSHEIN、AliExpressなどで販売される商品から基準値を超える有害物質が検出された事例が報告され、消費者の安全意識が高まりました。中国直送の低価格商品に対する警戒感が高まる中、日本国内の厳しい品質基準をクリアした日本企業の商品への需要が高まっています。

第三に、即日配送への期待です。Amazon Primeが当たり前になった世界では、消費者は「注文したら翌日には届く」ことを期待します。中国から2週間かけて届く配送リードタイムは、多くの消費者にとって不満のタネでした。国内倉庫からの配送が可能になれば、この課題は一気に解決します。

日本企業にとってのチャンス

このLocal to Local戦略は、日本企業にとって大きなチャンスです。具体的にどのようなビジネスチャンスがあるのか見ていきましょう。

チャンス1:高品質な日本製品の新たな販路
TemuやSHEINのプラットフォームには、すでに膨大なユーザーベースがあります。これらのプラットフォームに日本企業が出店することで、これまでリーチできなかった顧客層にアプローチできます。特に、日本品質への信頼が高い化粧品や健康食品、ベビー用品などのカテゴリで大きな可能性があります。

チャンス2:競合の少ないブルーオーシャン
Amazonや楽天はすでに多くの日本企業が出店しており、競争が激化しています。一方、TemuやSHEINの日本事業者向けマーケットプレイスはまだ始まったばかりで、競合は圧倒的に少ない状態です。先行者利益を狙える絶好のタイミングと言えるでしょう。

チャンス3:データに基づいた商品開発
TemuやSHEINは、ユーザーの購買データや行動データを豊富に持っています。これらのデータを活用することで、現地消費者が本当に求める商品を開発することが可能です。日本企業の高い製品開発力と、プラットフォームのデータを組み合わせることで、ヒット商品を生み出す確率を格段に高められます。

参入にあたっての注意点

チャンスが多い一方で、注意すべき点もあります。

価格競争に巻き込まれない戦略が必要
TemuやSHEINのプラットフォームには、圧倒的な低価格の商品が溢れています。日本企業がこれらのプラットフォームで成功するためには、明確な差別化戦略が必要です。「日本製の品質」「安心安全」「丁寧なアフターサービス」といった付加価値をしっかりと伝えることが重要です。

日本語以外でのコミュニケーション
TemuやSHEINのプラットフォームはグローバル展開しています。日本国内向けだけでなく、海外の消費者に向けた商品説明やカスタマーサポートの体制も考慮する必要があります。特に、英語や中国語での対応が求められるケースが増えるでしょう。

契約条件とコンプライアンスの確認
TemuやSHEINと契約する際は、手数料体系や返品ポリシー、知的財産権の取り扱いなど、契約条件を十分に確認することが重要です。また、各国の法的要件(製品安全基準、表示義務など)を満たしているかどうかも、事前に確認しておく必要があります。

まとめ

TemuとSHEINのLocal to Local戦略は、中国発越境ECの新たなフェーズを示しています。これまで「中国から世界へ」の一方通行だった流れが、「現地から現地へ」の双方向に変わりつつあるのです。この変化は、日本企業にとって越境ECの新たな扉を開くものです。

特に、TemuやSHEINが現地事業者の誘致を強化している今こそ、参入の好機です。競合が少ない初期の段階で出店し、プラットフォーム上でのブランド認知を構築することで、後発の競合に対して優位に立てます。日本品質への信頼を武器に、TemuやSHEINの新たなチャネルを活用してみてはいかがでしょうか。

越境ECの戦略は、常に変化しています。その変化をチャンスと捉え、積極的に行動することが、ビジネスの成長につながります。TemuとSHEINのLocal to Local戦略は、まさに今そのチャンスを提供しているのです。