2026年4月、日本経済新聞が報じたニュースが、越境EC業界に衝撃を与えました。「2025年の中国EC販売、日本ブランドが4年ぶりに増加」。このニュースは、長らく中国市場で苦戦していた日本ブランドにとって、明るい兆しです。なぜこのタイミングで日本ブランドが復調したのか。背景にある消費者の意識変化と、日本企業が取るべき戦略を深掘りします。
4年ぶりの増加—その数字が意味するもの
日経新聞の報道(2026年4月28日)によると、中国のECプラットフォームにおける日本ブランドの販売額が、2025年に4年ぶりの増加を記録しました。これは単なる一時的な回復ではありません。その背景には、「節約疲れ」と「品質回帰」という中国消費者の大きな意識変化があるのです。
2021年から2024年にかけて、中国市場では日本ブランドは苦戦を強いられていました。中国のナショナリズムの高まりや、韓国ブランドの台頭、そして何よりTemuやSHEINといった超低価格プラットフォームの急成長が、日本ブランドの存在感を相対的に低下させていました。しかし、2025年に入って状況が変わり始めます。長引く低価格競争に消費者が「節約疲れ」を感じ始めたのです。確かにTemuで300円のワンピースを買うのは楽しい。でも、届いた商品の品質に満足できない。洗濯したら色落ちした、サイズが合わない、すぐにほつれた——こうした声が中国のSNSで増え始めました。
そこで浮上したのが「品質回帰」という流れです。低価格に飛びついても結局満足できないなら、少し高くても確かな品質のものを買いたい。この心理が、日本ブランドの復調を後押ししています。

復調を牽引する3つのカテゴリ
日本ブランドの復調をけん引しているのは、主に3つのカテゴリです。
化粧品・スキンケア
中国市場における日本コスメの人気は根強く、特にスキンケアカテゴリでの信頼は絶大です。SK-IIや資生堂といったプレミアムブランドに加え、2026年は「LDK」や「@cosme」など日本の口コミメディアで高評価を得た中価格帯ブランドの伸びが顕著です。中国消費者が求めるのは「成分の透明性」と「効果の実感」。日本の化粧品は成分表示が詳細で、品質管理が徹底されている点が高く評価されています。また、中国の「軽養生(ライトウェルネス)」トレンドとも親和性が高く、肌に優しい自然派成分を使った日本製品への需要が高まっています。
健康食品・サプリメント
中国では健康意識の高まりを受け、日本製の健康食品やサプリメントへの需要が急増しています。特にDHCのサプリメント群や、FANCLの無添加サプリメントは爆発的な人気です。中国のECプラットフォームでは「日本製」というだけで検索回数が増えるほどで、品質への信頼の厚さが伺えます。2026年は「肝臓ケア」「腸活」「美肌サプリ」の3カテゴリが特に好調で、日本の機能性表示食品制度を活用した商品開発が差別化につながっています。
アパレル・ファッション
UNIQLOや無印良品などの大手に加え、日本の中小アパレルブランドにも注目が集まっています。中国のZ世代の間では「シンプルだけど上質な日本製」という価値観が広がっており、「Jファッション」として一つのカテゴリを形成しつつあります。特に注目なのは「天然素材」「職人技」「サステナビリティ」といった日本のものづくりの強みが、高単価でも受け入れられている点です。
復調の背景にある中国消費者の変化
中国消費者の購買行動は、2026年に入って大きく変化しています。この変化を理解せずして、日本ブランドの復調を正しく捉えることはできません。
まず「節約疲れ」です。TemuやSHEINの爆発的な普及は、中国国内でも同様で、2024年から2025年にかけては「とにかく安いもの」を追い求める消費者が急増しました。しかし、その反動が2025年後半から顕在化しています。低価格商品を買い続けた結果、品質の低さに不満を感じる消費者が増え、SNS上では「結局日本製を買い直した」という投稿がバズるようになりました。この「低価格疲れ」とも言える現象が、日本ブランドの復調の基盤となっています。
次に「品質回帰」の流れです。2025年後半から2026年にかけて、中国の消費トレンドは「量から質」へとシフトしています。これは、コロナ後の中国経済の減速や不動産不況を背景に、消費者が「本当に価値のあるものにだけお金を使いたい」という慎重な消費姿勢を強めていることも関係しています。衝動買いの減少と、リサーチを徹底した上での購入が増えているのです。
さらに注目すべきは「日本ブランドの再評価」です。中国では近年、韓国ブランドの台頭や国産ブランドの品質向上がありましたが、その一方で「日本製」の品質の高さが再評価され始めています。特に30代以上の女性を中心に、「日本製は値段が高くても後悔しない」という声が多く聞かれるようになりました。
日本企業が押さえるべき戦略
この復調の波に乗るために、日本企業が押さえるべきポイントをいくつかご紹介します。
中国ECプラットフォームの最適活用
2026年の中国EC市場では、Tmall GlobalやJD Worldwideといった越境ECプラットフォームに加え、Douyin(TikTok中国版)でのライブコマースが急速に拡大しています。日本ブランドが中国市場で成功するには、これらのプラットフォームの特性を理解し、最適なチャネル戦略を構築することが不可欠です。
抖音(Douyin)マーケティングの強化
中国独自のSNS・ECプラットフォームである抖音の影響力は絶大です。2026年、日本ブランドの抖音でのプレゼンス強化は必須と言えます。特に、中国人インフルエンサー(KOL)とのタイアップや、ライブ配信での商品紹介が効果的です。実際、ある日本のスキンケアブランドは、抖音のトップKOL起用により、1回のライブ配信で1億元(約20億円)以上の売上を記録した事例もあります。
「日本らしさ」の明確な打ち出し
中国市場で日本ブランドが評価される理由は「品質の良さ」「デザインの繊細さ」「パッケージの美しさ」です。これらを明確に打ち出したコミュニケーションが重要です。逆に、「日本ブランドなのに日本らしさがない」と感じられると、かえって逆効果になります。商品パッケージやブランドストーリーにおいて、日本の伝統や職人技、品質へのこだわりを積極的にアピールすることが効果的です。
まとめ
日本ブランドの中国EC市場での4年ぶりの復調は、「節約疲れ」と「品質回帰」という消費者の意識変化を背景にした、構造的なトレンドです。この流れはまだ始まったばかりで、2026年から2027年にかけてさらに加速すると予想されます。
しかし、このチャンスを掴むためには、ただ「日本製です」と言うだけでは不十分です。中国市場の最新トレンドを理解し、適切なプラットフォームで、現地の消費者に響くコミュニケーションを行う必要があります。2026年は、日本ブランドが中国市場で再び輝きを取り戻す絶好の機会です。この波に乗り遅れないよう、今から準備を始めましょう。
